中途採用が思うように進まないとき、多くの企業がまず考えるのは「エージェントを増やそう」「スカウト媒体を入れよう」「採用広報を強化しよう」という打ち手です。
ただ、採用支援の現場に入ってみると、それ以前の問題であることが結構あります。
求人票やJD(Job Description)の内容が詰まっていないまま、採用活動だけが走り出している。
エージェントに渡しているJDを見せてもらうと、「これだと紹介は出にくいだろうな」と感じるケースがよくあります。
現場にフォーマットを渡して書いてもらう。それだけだとうまくいかない
JDの作成がどう進んでいるかを聞くと、だいたいこういうパターンです。
人事がExcelのフォーマットを現場に送る。現場の部門長や課長が記入する。人事がそれをATSに入れて、エージェントに流す。
この流れで求人票作成とエージェントへの連携が終了していることが多いです。
とくに問題がないように見えますが、こうしてできたJDには一つの偏りがあります。「現場が欲しい人」は書かれているけれど、「候補者から見てどう映るか」「応募したいと思える求人なのか」「エージェントが取り組みやすい求人なのか」という視点がほとんど入っていない。
現場は当然、自部門に必要な人材像を書きます。それはリアルな要件です。ただ、転職市場にその条件の人がどれだけいるのか、自社の知名度や年収で振り向いてもらえるのかという観点は、現場の担当者には見えにくいです。
結果として、要件はもっともだけれど、実際にはほとんど該当者がいないJDが出来上がる。エージェントに共有しても推薦が来ない。スカウトを打っても反応が薄い。このようにJD側に原因があることも多いのが実情です。
「欲しい人材」と「今採れる人材」は違う
採用要件を整理するとき、一番起きやすいのは「理想像をそのまま必須要件にしてしまう」ことです。
たとえば、こんな要件。同業界で10年以上の営業経験。10名以上の組織をマネジメントした経験あり。英語力ビジネスレベル。どれも理解できる条件ですが、これを全部「必須」にしたら、対象者はかなり限られます。
ここで必要になるのが、市場側から逆算する視点です。
自社の採用ブランドはどのくらいか。出せる年収レンジは競合と比べてどうか。勤務地のハードルはどの程度あるか。今の転職市場で、この条件に合う人がどれくらい動いているか。
こうした要素を重ねて考えると、「欲しい人材像」と「現実的に採用できるターゲット」にギャップがあることは珍しくありません。そのギャップに気づかないまま採用活動を続けていると、いつまでたっても「良い人がいない」「エージェントからの推薦が的外れ」「書類が一つも通過しない」という状況から抜け出せません。
理想を下げるという話ではなく、どこを必須とし、どこを歓迎に回すか。その線引きを市場に合わせて調整するだけで、応募が増えるということも良くあるんです。
必須要件は「内定を出したい人」ではなく「会いたい人」で考える
求人の募集条件で必須要件が、事実上「最終的にオファーを出したい人」のスペックになっている求人はよくあります。
気持ちはわかるのですが、これをやってしまうと応募は減ってしまうんです。 (エージェントから変な推薦が来ないようにあえてやってるケースもありますよね)
エージェントは必須要件に合わない人を推薦しづらいです(してくるところもありますが、、)。そうすると応募が来ないですし、自社でスカウトしたとしてもターゲットが絞られすぎて、そもそもスカウトが送れない。そうすると返信は少なくなります。こうなると、面接の機会自体が生まれない状態で、「良い候補者に出会えない」と悩むことになります。
必須要件は、「この経験があれば一度話してみたい」くらいのラインで設定するほうが現実的です。見極めは面接でやればいい。入口で絞りすぎて、本来出会えたかもしれない人を逃すほうが機会損失は大きいです。
実際、必須と歓迎の線引きを見直しただけで、エージェントからの紹介が増えたケースは何度もあります。
JDは作って終わりではない。エージェントとの対話で精度が上がる
JDを仕上げてエージェントに渡す。そこで終わりにしている企業は多いですが、本当はそこからが大事です。
JDを共有するタイミングで、信頼できるエージェントに聞いてみてください。「この条件で紹介は出そうか」「他社の類似求人と比べて競争力はあるか」「候補者が気にしそうなポイントはどこか」。
常に候補者に会っていて、同業他社の求人をよく知るエージェントからのアドバイスは要件の現実度を測るうえでかなり参考になると思います。
2〜3年前なら簡単に採用できていた条件でも、今の市場では通用しなくなっていることは普通にあります。
エージェントからの紹介が少ないとき、ついエージェントの動きに目が向きがちですが、実はJDの条件が厳しすぎて推薦しづらかった、ということもあります。求人の魅力が文面から読み取れなくて、候補者に紹介しにくかった、ということも。
エージェントとの関係は、JDを渡して待つだけの一方通行より、要件について対話できる関係にしたほうが、結果的にうまく回ります。エージェントをしっかり評価して、本当に力のある信頼できるエージェントを見極めることも大事です。
JDは社内資料ではなく、候補者へのメッセージ
最後にJDの「書き方」についても触れておきます。
JDを見せてもらうと、業務内容と応募要件が箇条書きで並んでいるだけ、というケースがかなり多いです。JDは候補者との唯一の接点であり、それを見て候補者が応募するかどうかを考えるということを考慮すると、そっけなさすぎます。
候補者が知りたいのは、条件だけではありません。なぜこのポジションを採用するのか。入社したらどんな仕事をするのか。何が面白いのか。誰と働くのか。気になるポイント——残業の実態、転勤の有無、技術環境の新旧など——にどう答えられるか。
こうした情報が入っているJDとそうでないJDでは、候補者の反応がまるで違います。エージェント経由の場合でも、エージェントが候補者にポジションを説明するときの材料はJDです。JDに書かれていなければ、伝えようがありません。
JDは募集要項であると同時に、候補者への最初のプレゼン資料でもあります。そう考えて書くだけで、応募の質も量も変わってきます。
おわりに
採用がうまく進まないとき、施策を増やしたり、外部にコストをかけたりする前に、求人票・JDを一度立ち止まって見直してみてください。それだけで流れが変わることがあります。
現場の要望をそのまま写しただけになっていないか。必須要件で間口を狭めすぎていないか。エージェントに渡したあと、対話ができているか。候補者に届く内容になっているか。
JDは採用活動の出発点です。ここが曖昧なまま動いても、エージェント活用もスカウト運用もうまく噛み合いません。
フレイズでは、製造業を中心とした中途採用支援において、求人要件の整理やJD設計の見直し、エージェントとの連携強化、採用活動全体の設計まで、実務に即したかたちで支援しています。
「求人を出しているのに紹介が集まらない」 「要件の整理から一緒に考えてほしい」 「エージェントとの連携を見直したい」
そうした課題があれば、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら