大手エージェントに頼んでも製造業の技術者が採れない? 推薦の「質」が落ちている構造的な理由

2026.04.06

メーカーの採用支援/採用ノウハウ 採用事例/採用ノウハウ ニュース

 

「エージェントに頼んでいるのに、なんでこんな人が推薦されるんだ」
 

製造業の採用担当者やエンジニアリング部門の責任者から、こうした声を聞く機会が増えました。推薦の数自体はむしろ増えている。なのに、書類選考を通過する人がほとんどいない。選考に時間だけ取られて、採用が前に進まない。
 

この背景には、人材紹介業界のマッチングの仕組みが大きく変わったことが影響しています。今回は、なぜ推薦の質が落ちているのか、そして企業側がどう向き合えばいいのかを整理してみます。

 

AIマッチングの進化で、逆に「推薦」の中身が変わった

 

かつてのエージェントのマッチングは、キャリアアドバイザー(CA)が候補者と面談し、経験やスキルを把握したうえで「この人ならこの求人に合う」と判断して推薦するのが基本的な流れでした。合わないと判断すれば、推薦しないこともあった。企業からすると、エージェントが事前にスクリーニングしてくれているという信頼があったわけです。
 

ところが、この仕組みが変わってきました。自動マッチングの仕組み自体は以前から存在していましたが、近年はAIを活用したマッチング機能の強化が各社で進んでいます。求人票に設定された年齢や職種カテゴリをもとに、条件がある程度合致する候補者をシステムが自動で引き当て、推薦につなげる。マッチングの「精度が上がった」とされる一方で、実際に起きているのは、CAが介在せずに推薦が量産される状態です。
 

テクノロジーの進化でマッチングが高度化したように見えて、企業が本来エージェントに期待していた「人の目によるスクリーニング」は、むしろ後退している。
 

この変化は候補者側の行動にも影響しています。以前はCAが「この求人は合わない」とフィルターをかけていた案件にも、自動マッチング経由で候補者が応募できるようになった。結果として、候補者側もとりあえず応募するという動きが増えている。
 

企業にとっては、推薦の数は増えたけれど、中身を見ると的外れなものが混ざるようになったという状態です。機会損失が減った面はあるものの、「エージェントに頼んでいるのに、なぜスクリーニングされていない推薦が来るのか」という不満につながっている。
 

推薦数を追うことも、自動マッチングの仕組みも、どちらも以前から存在していました。ただ、AIによるマッチング機能の強化が進んだことで、かつてはCAが担っていた「この人は推薦して大丈夫か」というスクリーニング機能が実質的に薄まっているのが今の状況だと感じます。
 

製造業の技術職は「職種名」だけではマッチングできない

 

この傾向は、どの業界でもある程度起きています。ただ、製造業の技術職では特に影響が大きい。理由はシンプルで、同じ職種名でも、求められる技術の中身がまったく違うからです。
 

たとえば「機械設計」という職種カテゴリ。これは非常に幅が広い。自動車のシャシ設計と半導体製造装置の設計では、扱う技術も設計思想もまるで異なります。さすがにこのレベルの違いは、製造業の人材紹介をやっている担当者なら区別がつくはずです。
 

問題はもっと細かいレベルでの見極めです。
 

同じ機械設計でも、扱う素材が樹脂なのか金属なのかで設計のアプローチは変わります。駆動部分がある製品とそうでない製品でも、求められる知識や経験は違う。人工衛星のように宇宙空間の過酷な環境下で動作する製品を設計してきた人と、民生品の設計者では、品質に対する考え方の解像度がまったく異なります。
 

一方で、自動車業界のように極めて高い品質基準が求められる環境で設計をしてきた人であれば、どんなに年齢が高くても、異業界の求人にフィットする可能性もある。「自動車出身だから自動車の求人にしか合わない。年齢が高いから難しい。」ということではなく、その人がどんな要素技術を持っていて、どんな役割で、どんな仕事をしてきたのかが見極めのポイントになります。
(これは恐らくレジュメを読み込まないとわからないし、求人票に書かれていないような要件、ターゲット像を想像できないとマッチングができないです)
 

こうした判断は、職種マスタをもとにした自動マッチングではまず対応できません。求人票に書かれたキーワードだけで候補者を引っ張ってきても、企業が本当に求めている技術経験とズレた推薦が量産されるだけです。

※求人票・JDの設計についてはこちらの記事でも詳しく触れています
 

企業側ができる4つのこと


構造的な問題がある以上、「良いエージェントを使えば解決する」と単純に言い切ることはできません。ただ、企業側の動き方次第で、推薦の質を改善できる余地は十分にあります。
 

① 「大手だから」ではなく、担当者レベルで見極める

エージェントの良し悪しは、会社単位よりも担当者単位で決まります。大手エージェントの中にも、製造業の技術職に精通した優秀な担当者はいます。逆に、業界特化型のエージェントでも、担当者の経験が浅ければ的外れな推薦が来ることはある。
 

見極めのポイントのひとつは、推薦が連続で通らなかったときの反応です。良い担当者は、何回か続けて書類選考に落ちたら自分から電話をかけてきて、「どこが合わなかったか」「次はどういう人を出せばいいか」を確認してきます。
(もちろん、電話でなくても、打ち合わせやメールでも)

こうした地道なやり取りの積み重ねが、推薦精度を上げていく。逆に、落ちても何のリアクションもなく次の推薦が送られてくるだけなら、その担当者との関係を見直したほうがいいかもしれません。
 

② 業界に強いエージェントの「良い担当者」を探す

とはいえ、業界特化型のエージェントで良い担当者がついた場合の推薦精度は、やはり段違いです。
製造業の技術や製品に対する理解があるかどうかで、推薦の質は大きく変わる。
 

すべてのエージェントを大手1社に集約するのではなく、業界に強いエージェントを1〜2社並行して使ってみるのは有効な選択肢です。

 

③ 担当者に率直にフィードバックする

「この候補者はなぜ合わなかったのか」を具体的に伝えること。

これを続けると、担当者の理解度が上がり、推薦の精度が徐々に改善されることがあります。
 

少し手間はかかりますが、多少育成するくらいの気持ちでエージェントの法人担当と向き合うのも、中長期的には効果があります。特に大手の担当者は複数業界を兼務していることが多いので、企業側から積極的に情報を渡すことで、自社案件への理解度を引き上げることができます。

※エージェントとの付き合い方についてはこちらの記事もあわせてご覧ください
 

④ ある程度は企業側でスクリーニングすると割り切る

これは理想的な状態ではありませんが、現実的な選択肢として。
 

エージェントからの推薦を絞りすぎると、そもそも推薦自体が来なくなるリスクがあります。ある程度は精度の低い推薦が混ざることを織り込みつつ、企業側で書類選考のスクリーニング基準を明確にしておく。「この要素技術の経験があるかどうか」で一次フィルターをかける仕組みを持っておくと、選考の手間を最小限に抑えられます。
 

ただ、本来これはエージェントがやるべき仕事です。この手間が大きくなりすぎているなら、エージェントの選定自体を見直すタイミングかもしれません。
 

おわりに


大手エージェントの推薦の質が落ちているという問題は、特定の会社が悪いという話ではなく、業界全体の構造変化によるものです。自動マッチングと推薦数重視のKPI設計が進む中で、製造業の技術職のように「職種名だけでは判断できない」ポジションほど、そのしわ寄せを受けやすくなっているのかなと思います。
 

だからこそ、エージェントとの付き合い方を見直すこと、そして技術がわかるエージェントを選ぶことが、製造業の採用をうまく進めるための現実的な打ち手になるのではないでしょうか。
 

フレイズでは、製造業をはじめとする技術系ポジションの人材紹介を行っています。代表の村田はリクルート・パーソルキャリアでの製造業領域の人材紹介を経験しており、技術的な背景を踏まえたマッチングを強みとしています。
 

「推薦の質に課題を感じている」「製造業の技術がわかるエージェントを探している」という方は、お気軽にご相談ください。
 

お問い合わせはこちら →